ブレイク・スナイダーの脚本術 その3

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ブレイク・スナイダー・ビート・シート

ブレイク・スナイダー・ビート・シート

ブレイク・スナイダー・ビート・シート(以下BS2)はスナイダーの独自脚本テンプレート。脚本を15のビートに区切ったものです。

●ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)

1.オープニング・イメージ(1)

2.テーマの提示(5)

3.セットアップ(1~10)

4.きっかけ(12)

5.悩みのとき(12~25)

6.第一ターニング・ポイント(25)

7.サブプロット(30)

8.お楽しみ(30~55)

9.ミッド・ポイント(55)

10.迫り来る悪い奴ら(55~75)

11.すべてを失って(75)

12.心の暗闇(75~85)

13.第二ターニング・ポイント(85)

14.フィナーレ(85~110)

15.ファイナル・イメージ(110)

()の数字はビートの起こるページ数(脚本は大体110枚としての数字)。

オープニング・イメージ(1)

観客に映画の第一印象を決定づけるビート。作品のスタイル、ジャンル、スケール、雰囲気を示し、主人公を紹介する。観客がこれからどういう映画を見るのか想像できる要素を提供しなけらばならない。

オープニング・イメージは後のファイナル・イメージと対になっている。脚本が完成したらオープニング・イメージとファイナル・イメージを見比べ、劇的な変化がしっかり描かれているか確認する。

テーマの提示(5)

構成の良い脚本は、冒頭5分あたりで誰がが問題提起したり、テーマに関連したことを口にする。会話中の何気ない一言、あからさまな予言、現象など表現方法は様々。主人公はこの時点で意味を理解していないが、やがて<それ>が重要な意味を持っていたことに気付く。

多くの脚本には脚本家の主張が含まれる。これこれに賛成か反対か、こういった物、行動に価値はあるか、尊重すべきは個人か組織な等々。どのようなジャンルであれ、主張(テーマ)がありそれは冒頭で表される。BS2では5ページ目。

セットアップ(1~10)

脚本の最初の10ページはセットアップと呼ばれ、観客が関心を持つか無くすかを決める境目。

物語の登場人物の紹介も行われる。主要な登場人物は開始10分以内で全員登場、少なくとも存在がほのめかされる。さらに各人物の特徴、後に起こる問題の原因、主人公の勝利に必要な変化が提示される。要は今後の物語進行で必要な要素はここで全て提示される。

「主人公の勝利に必要な変化」とは、今の主人公に欠けているものと言い換えてもいい。冷血な態度→優しさ、引き篭もる→対人能力、享楽的な行動ばかりしている→賢さ・慎重さ。

きっかけ(12)

主人公の変化の旅のきっかけが提示される。電報、解雇通知、妻の浮気現場を目撃、余命宣告、使者の来訪など。きっかけはいい知らせだったり悪い知らせだったりするが、冒険や旅が終わる頃にはきっかけによって主人公は幸福を手に入れている。

悩みのとき(12~15)

主人公が目標に対し実現不可能じゃないかと悩み、竦む。内からの疑問、不安に答えを出し、出立を選ぶ。

第一ターニング・ポイント(25)

25ページでは何かが起きなければならない、何かとっても大きなことが。一幕と二幕の境目は古い世界を出て、正反対の世界に進む瞬間。

二つの世界はあまりに違い、入るには明確な意志が必要になる。主人公は何となく第二幕に入ってはいけない。誘惑に負けた、半分騙されたなどではなく明確に自らの意志で入る。きっかけは不可抗力でも、受け入れ、旅立つ決意は本人の意志だ。

サブプロット(Bストーリー)(30)

メイン・プロット(Aストーリー)のターニング・ポイント後の衝撃を和らげながら、さらにストーリーを前進させる。ブースターロケット的役割。観客は第二幕へ突入して今までの世界と正反対の世界に放り込まれる。メイン・プロットの話ばかりで観客は疲れており、息抜きや気分転換として別のストーリーを見せる。

サブプロットはラブストーリーが多い。

お楽しみ(30~55)

「お楽しみ」は観客に対するお約束を果たす場。ポスターや予告編で使った一番おいしい部分であり、観客はここに一番期待している。

お楽しみはストーリーの最終ゴールを少し逸れて、お約束の場面を観客に見てもらう場所。全体のトーンは軽め。

ミッド・ポイント(55)

映画は前半と後半に分かれ、その中間点がミッド・ポイント、物語の折り返し地点。第一幕と第二幕の終わりが重要だが、ミッド・ポイントも同じくらい重要。

ミッド・ポイントで主人公は絶好調(実は見せかけ)か絶不調(実は見せかけ)になることが多い。どちらになるかは脚本次第ですが、ここを押さえておけばストーリーが安定する。

ミッド・ポイントからいきなり危険度がアップする。「お楽しみ」は終わり、全体が元のストーリーラインに戻る。

ミッド・ポイントが「見せかけの勝利」になっている場合、主人公は望むもの全てを手に入れたと勘違いしているが、あくまで一時的勝利にすぎない。主人公はこれから本物の教訓を学ばなければならない。

ミッド・ポイントと対のビートが「すべてを失って(75)」です。両者は正反対のビートであり、ミッド・ポイントが絶好調(見せかけの勝利)なら「すべてを失って」では絶不調になる。ミッド・ポイントは見せかけの勝利か見せかけの敗北のいずれかであり、「すべてを失って」はその逆になる。

迫り来る悪い奴ら(55~75)

ミッド・ポイントでは一見全てが上手くいき、主人公は絶好調に見え、悪役達(物や現象なども含む)は敗北したように見える。しかしそれは間違いだ。悪役達は「迫り来る悪い奴ら」で態勢を立て直し、総攻撃の準備を完了させる。

悪役達が力を増すのとは逆に主人公達の力は弱まる。勝利後の意見の食い違い、自惚れ、嫉妬、絆に亀裂が入り結束が弱まり始める。

すべてを失って(75)

「すべてを失って」はミッド・ポイントとは逆の展開になる。ミッド・ポイントが絶好調なら「すべてを失って」は絶不調だ。これは見せかけの絶不調であり、最悪の状況は一時的だが、何もかもが破滅し主人公はどん底に落とされる。

このビートのスパイスとして死の気配が挙げられる。「すべてを失って」では誰かが死ぬことが多い。自分が頼りにしていた人物が死にたった一人になる。これはその後の主人公自立の布石でもあるため、主人公にとっての指導者がよく選ばれる。

死なせる適当な人物がいなくても、死を象徴させるものを付け加えればいい。枯れた植木鉢の花、金魚の死など、要は死の気配を漂わせることが重要。

心の暗闇(75~85)

「すべてを失って」でどん底に落ちた主人公が答えを見出す。このビートは5秒で終わることもあれば5分続くこともある。夜明け前の闇であり、主人公は深く考え心の奥底を探る。自暴自棄になり愚行に走ることもある。だが最後には答えを見出す。

「心の闇」は悟りのビート。

第二ターニング・ポイント(85)

サブプロットの登場人物たちとのやり取り(台詞)、自分自身で悩み熟考の末、主人公が解決策をひらめく。もう一度奮起し悪に立ち向かう決意を固める。

フィナーレ(85~110)

「フィナーレ(結末)」は第三幕、全てのまとめ。主人公が教訓を学び、今までの悪い点が改善され、メインプロットもサブプロットも主人公が勝利して終わる。古い秩序は滅び、新たな秩序が回り始める。

「フィナーレ」で悪役達は一掃される。子分などの下から始まり最後に親玉が、新たな秩序形成のため滅ぶ。「フィナーレ」は主人公の勝利のみならず、新たな秩序をもって世界が新生されなければならない。

ファイナル・イメージ(110)

「ファイナル・イメージ」は「オープニング・イメージ」と対になっており、確かな変化が起きたこと表現する。「オープニング・イメージ」で現れた不可能なこと、やってしまう失敗をもう一度登場させ、可能になったこと、失敗しなくなったことを表す。

「ファイナル・イメージ」が思い浮かばない場合、第二幕の積み上げが足りない。