ブレイク・スナイダーの脚本術とは
「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」は、アメリカAmazonの脚本部門で1位を獲得した脚本指南書。有名な「千の顔をもつ英雄〈上〉」「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」などを下地に、著者ブレイク・スナイダーの脚本術を公開しています。
ログラインは脚本家が最初にすべき仕事
ログライン(もしくはワンライン)は「脚本の内容を一行で簡潔に説明」したものです。スナイダーはログライン作りは脚本家が最初にすべき仕事であり、一行で読者の心を掴めない脚本家の脚本など聞くまでもないと断言します。
好例として挙げるログラインは以下です。
・新婚ホヤホヤのカップルが、離婚した親(計四人)のもとでクリスマスを過ごすことに・・・。
『フォー・クリスマス』(08)
・入社したての新入社員が週末に会社の研修に行くが、なぜか命を狙われる。
『The Retreat』
・超安全志向の教師が理想の美女と結婚することになるが、その前に将来の義理の兄(警官)と最悪の相乗りをする羽目になる!!
『Ride Alogn』
ログラインはテスト・マーケティング、即ちその辺の赤の他人に聞かせて意見を聞くべきだと主張します。アイデアが盗まれるかも? と不安がるのは素人。大事なのは面と向かって反応を見ること。アイデアを説明する。相手が視線を逸したり、ソワソワしたら駄目。そういったアイデアは修正の必要有り。
良質のログラインには共通項があるとスナイダーは言います。
「どんな映画なの?」に答えている
上にも書きましたがログラインの基本。
皮肉がある
・警官が別居中の妻に会いに来るが、妻の勤める会社のビルがテロリストに乗っ取られる。
『ダイ・ハード』(88)・週末の楽しみに雇ったコールガールに、ビジネスマンは本気で恋をしてしまう。
『プリティ・ウーマン』(90)
スナイダーは上記のログラインを例に挙げ、いいログラインには皮肉があると言います。ここで言う皮肉は多義的ですが、例えば撞着語法で、矛盾している要素をくっつけた表現です。
イメージの広がり
ログラインから映画の全体像が見えるかどうか。いいログラインからは、パッと花が開くように全体像が想像できたり、潜在的可能性が見えたり、面白いことが起こりそうな予感を感じさせます。例として『ブラインド・デート』(87)の「彼女は完璧な美女ーお酒を飲むまでは・・・」を挙げています。
パッと頭の中で魅力的なイメージが浮かぶか、映画の時間や全体の雰囲気が想像できるか。
観客と制作費
ログラインは映画会社のバイヤーを惹きつける要素、即ちターゲットとなる客層や制作費が明確であるべきです。これは映画脚本ならではの要素でしょう。プロのバイヤーは設定を知ればおおよその制作費(人件費や製作期間)が読めるのでしょうね。
パンチの効いたタイトル
インパクトのあるタイトルとログラインが組み合わさると、ボクシングの連続パンチみたいにノックアウト確実である、とはスナイダー談。
タイトルにも皮肉は欠かせず、ストーリーが透けて見えねばならない。コンセプトを伝えながらも馬鹿っぽくないタイトルかつけられるかどうかが腕の見せ所です。
主人公を作ろう!
主人公造形の必ず守るべき基本は以下。
- 共感できる人物
- 学ぶことのある人物
- 応援したくなる人物
- 最後に勝つ価値のある人物
- 原始的でシンプルな動機があり、その動機に納得がいく人物
- 設定された状況のなかで一番葛藤する
- 感情が変化するのに一番時間がかかる
- 楽しんでもらえる客層の幅が一番広い
主人公を作るには、この単純なルールに従えばまず間違いない。特に原始的な動機はあるか? は重要。人間は本能的で原始的なものに心を動かされる。生き延びること、飢えに打ち勝つこと、性愛、愛する者を守ること、死の恐怖に打ち勝つこと、こうした根源的欲求は万人の心を掴む力があります。
さらに客層の幅も重要。書き手はどうしても観客が自分と同年代と思い込みがち。作品を鑑賞する層が本当に共感できる主人公にしなければならない。